クリティカル パス法とは

クリティカル パス法を活用して、普段の仕事をシンプルに。期限と予算を守りながらプロジェクトを完遂できるようになります。

クリティカル パス法の概要

納期がたびたび変更されるなど、変動要因の多い複雑なプロジェクトの管理に悩まされていませんか?こうしたプロジェクトで期限と予算を守るのは簡単なことではありません。そんなときは、プロジェクトの目標達成に役立つさまざまなプロジェクト管理ツールを活用してみましょう。クリティカル パス法(CPM)は、そうしたツールの 1 つです。

クリティカル パス法とは

クリティカル パス法は、複雑なプロジェクトの分析、計画、スケジュール設定に有効なプロジェクト モデリング手法です。この手法では、プロジェクトを完了するために必要なすべてのアクティビティ、各アクティビティの実施に要する時間、そして各アクティビティの依存関係を定義して分析を実施します。クリティカル パスとは、プロジェクト全体を遂行するために最も時間のかかる作業経路を指しており、クリティカル パス法では、この経路をもとに、コストを最小限に抑えつつ、期限内にプロジェクトを完遂する最良のスケジュールを計画します。ごく簡単に説明すれば、プロジェクトの実施に最も適したスケジュールを把握するのに役立つ、ということです。

クリティカル パス分析の歴史

クリティカル パス法が生まれたのは、1950 年代末のことです。事務機器メーカー Remington Rand のジェームス・E・ケリー氏と化学メーカー DuPont のモーガン・R・ウォーカー氏によって開発されました。当時、十分な計画なしに行われる工場の操業休止と再開にかかるコストの抑制方法を模索していた 2 人は、単純に労働力を追加投入するのではなく、適切なタイミングで適切な作業を行うようにすれば、余計なコストを費やさずに済むことに気付いたのです。

1959 年、ケリー氏とウォーカー氏はこの研究に関する論文を発表。しかし DuPont は、研究に関わった経営陣の退任をきっかけに、この方法論から離れていきます。同じころ、米海軍とブーズ・アレン・ハミルトン氏が同様のプロジェクト管理手法である PERT(プログラム評価とレビューのテクニック)を開発していますが、「クリティカル パス」という名称はこの手法で使われていた用語に由来しています。クリティカル パス分析と軍事の関係は深く、そのルーツである 1940 年代初頭に DuPont が採用していた手法は、マンハッタン計画の成功につながっています。

DuPont は、クリティカル パス法に対する関心を 1960 年代初頭には失っていましたが、そのころには Mauchly Associates や Catalytic Construction など複数の企業が大規模プロジェクトの管理に同手法を使い始めています。当初、クリティカル パス法を実践するには大型の専用メインフレーム コンピュータが必要であり、そのためのコストがクリティカル パス法の導入を阻む大きな要因となっていました。しかし、パーソナル コンピュータの革命とハードウェアやソフトウェアの技術革新により、一般的なデスクトップ コンピュータでもスケジュール管理ができるようになったことで、クリティカル パス法が一気に普及していくことになります。

クリティカル パス法によるプロジェクト管理

クリティカル パス法の第 1 段階は、4 つの基本ステップで構成されています。各ステップを少し詳しくご紹介しましょう。

  1. すべてのタスクとアクティビティをリストアップする:まず、プロジェクトの完了に必要となるすべてのタスクとアクティビティを作業分解構成図(WBS)にリストアップします。一般に、ここではあまり細部に立ち入らず、重要なタスクと上位レベルのアクティビティのみをリストアップするようにします。ありとあらゆるアクティビティを入れ込むと、クリティカル パス分析が複雑になり過ぎてしまい、管理が困難になるからです。
  2. 各タスクにかかる時間を計算する:次に、クリティカル パスを構成する各タスクの完了にかかる最長の時間を計算します。もちろん、これは推定の時間になりますが、自身の経験と周囲の知識に基づく根拠のある時間を計算します。また各タスクにかかる時間は、プロジェクトに遅れを生じさせずに開始、終了できる最も早い日を基準とする必要があります。
  3. タスクの依存関係を把握する:続いて、各タスクの依存関係を把握します。つまり、最初のアクティビティや前のタスクがその後のタスクの開始日に影響するようなケースを確認します。依存関係のあるタスクを把握するためには、アクティビティをリストアップする際、次の点を確認します。

    a. 当該タスクを開始する前に完了しておく必要のあるタスクはどれか
    b. 当該タスクの直後に実行する必要のあるタスクはどれか
    c. 当該タスクと同時に完了する必要のあるタスクはどれか
  4. プロジェクトのマイルストーンを明確にする:最後に、プロジェクトの成果物に加え、プロジェクトの主なマイルストーンを明確にします。

以上の作業を実施して必要な情報を集めたら、プロジェクトのアクティビティを視覚化するためのモデルを構築します。単純な図表からネットワーク図、ガント チャートまで、さまざまな方法を使用できます。このモデルを使用することで、プロジェクトのクリティカル パスを明確にできます。前述したように、モデル化されるのは、プロジェクトを完遂するまでの一連のアクティビティで構成される最長の経路と、プロジェクトに遅れを生じさせずに各アクティビティを開始できる最も早い日時および最も遅い日時です。またモデルからは、プロジェクトを完了するまでの最長期間もわかります。

クリティカル パスが判明したら、どの部分に「クリティカル アクティビティ」があり、どこに「トータル フロート」(プロジェクトに遅れが生じない範囲でアクティビティの開始を遅らせることのできる時間)があるかを特定できます。この情報は、特定タスクの開始時間を速やかに追跡する、必要に応じてプロジェクト期間を短縮する、リソースの制約を効果的に管理するなどの目的に利用できます。

クリティカル パス法のメリット

クリティカル パス法によるプロジェクト管理には、いくつかの大きなメリットがあります。まず挙げられるのは、プロジェクトの中で特に重要なタスクを見分けやすくなることです。クリティカル パスを構成するアクティビティの開始が遅れたか、想定よりも時間がかかった場合、プロジェクト全体が影響を受けることになります。プロジェクト計画によって、他よりも綿密な管理が必要なタスクが明確になっていれば、このような事態を避けやすくなります。また、クリティカル パス分析によってプロジェクトの期間を短縮できるという点も重要です。分析の結果から、期間短縮を図るのに最適なタスクを簡単に判断することができます。

さらに、クリティカル パス法によるプロジェクト管理を実施すれば、リスク評価もはるかに容易になります。タスクの依存関係を明らかにすることで、期限を守れなかった場合に次の成果物に及ぶ影響を判断しやすくなります。またクリティカル パス分析の結果は、プロジェクト マネージャーにとって、事前に決められたスケジュールに対する実際の進捗状況を測るための理想的なフレームワークとなります。元の基準に照らして実際の結果を追跡することで、効率の悪い場所を特定し、ワークフローからその原因を取り除くための対策を講じることができます。

クリティカル パス法が適したプロジェクト

クリティカル パス分析は、研究、エンジニアリング、製品開発、ソフトウェア開発、建設など、ほとんどあらゆる種類のプロジェクトに適用できます。目下のプロジェクトについて以下の文言が当てはまる場合は、クリティカル パス法が有効である可能性があります。

  • アクティビティが明確に定義されており、それらが終わることがプロジェクト完了の合図となる。
  • 各アクティビティは順番に並んでおり、正しい順序で実施する必要がある。たとえば建設プロジェクトにおいて、資材を先に調達しなければ、実際の建設作業を開始できない場合など。
  • 各アクティビティは、一連の流れの中で個別に停止、開始できる(石油精製などのように連続フロー プロセスのアクティビティを除く)。

これを見てわかるように、クリティカル パス法によるプロジェクト管理は、幅広い業種やプロジェクトに適用できます。ただし、クリティカル パス法のメリットを得るために、必ずしもその全体を適用する必要はありません。クリティカル パス法の中に、役に立ちそうな部分があれば、その部分だけをプロジェクト管理プロセスに取り込むことができます。このように柔軟な判断を下せることも、優れたプロジェクト マネージャーに求められる重要な資質の 1 つです。

チームでクリティカル パス法を活用する

ここまでクリティカル パス法について説明してきましたが、皆さんの組織ではどのように活用することができそうでしょうか。Dropbox では、クリティカル パス分析の実施に役立つツールをいくつか提供しています。たとえば 1 つの場所でプロジェクトのロードマップ全体を管理する目的で利用できる Dropbox Paper は、クリティカル パス法によるプロジェクト管理に最適です。まず、プロジェクト計画テンプレートを使って、プロジェクトの各ステップをメンバーに示しましょう。その後、適切なチーム メンバーにタスクを割り当て、プロジェクトを適切なペースで進めるための To-do リストを作成し、各メンバーに割り当てたタスクの状況をタスク管理ツールで把握する、といった使い方をすることができます。

まとめ

クリティカル パス法は、物事を明確にするための手段を提供してくれます。この手法を使えば、プロジェクトのワークフロー全体を最初から最後まで視覚化できます。「クリティカル パス」を特定し、最も重要なタスクに優先的にリソースを割り当てて、重要なプロジェクトをこれまでよりも短期間で遂行、完了しましょう。