株式会社西邦建設
社員のノウハウ・知見を Dropbox に蓄積し 書類作成の質の向上と、作業負荷の軽減に役立てる
“ 土木、建設の現場で欠かせない書類に『工事打合せ簿』があります。作る人によって内容、精度にばらつきが出るのが課題でしたが、Dropboxで過去のファイルを共有すれば、平準化が図れると考えました。 ”
Products used
Dropbox
Industry
Construction
Size
2-249
Location
Japan
抱えていた課題:工程の進捗に大きく関わる書類の完成度にばらつきがあった
三重県伊勢市エリアを中心に、公共事業をはじめ多くの施工実績を持つ株式会社西邦建設。土木と建築の二本柱で事業を展開していますが、中でも土木領域の JV(ジョイントベンチャー)案件に強く、常時 10 件ほどのプロジェクトが稼働しています。
現場の工程をスムーズに進めるためには、工事の発注者や協力会社との書類のやりとりを円滑化することが欠かせません。しかし同社は従来、この点にある課題を抱えていました。土木、建設の現場では、発注者からの依頼事項、作業の内容や変更点などを網羅的に記載した「工事打合せ簿」という書類を作成します。これを関係各社が確認しながら作業を進めるため、工事打合せ簿に不備があると、確認・修正のために作業が遅れて全体の工期に影響を及ぼします。
「経験豊富な社員と若手社員の間で、工事打合せ簿の完成度にばらつきがあるのが悩みの種でした。この書類をもとに数百万、数千万円規模のお金が動くため、内容の不備や記入漏れは確実になくす必要があります。手戻り発生による作業の遅延を防ぐためにも、書類作成を高いレベルで平準化する必要がありました」と同社の西山 雅章氏は話します。
当時、工事打合せ簿は各担当者が自分の PC で作成・保管しており、それが属人化の要因になっていました。過去の書類を誰もが確認できる形で全社に共有すれば、若手社員が作成方法を学べる上、正しい書類をベースにして作成することもできる。そう考えた同社は、仕組みの検討を開始しました。
ソリューション:誰もが開ける引き出しをつくり既存ノウハウを共有資産にする
「どのような IT ソリューションを活用するかは、現場部門が主体的に検討・選定します。我々総務部は、効果的なソリューションの提案や、導入支援を行う役目です」
と同社の西口 和行氏は語ります。今回も、この手法で検討を進めていきました。
ソリューション選定に当たり、同社がイメージしたのは “引き出し” です。引き出しに、過去に作成した工事打合せ簿を保管しておけば、見たい時に、誰でも、自由に引っ張り出して正しい書式を確認できます。既存ノウハウを会社の共有資産にできると考えたのです。
「また、若手社員が書類を作る際、忙しい先輩に不明点を聞くのは気が引けるものです。引き出しがあれば、そんな気兼ねも不要になると考えました」(西山氏)。
そんな折、IT パートナーの紹介で知ったのが Dropbox です。説明を受けてすぐに「これならいけそうだ」と感じました。
「当初はクラウドストレージを使う発想はなかったのですが、どこからでもアクセスできるクラウドは、大半の社員が現場にいる当社の業務に合っていると感じました。出先からスマートフォンで書類を閲覧したり、現場事務所で作った書類をアップロードしたりできるのは便利です」と西山氏は選定理由を話します。
このクラウドのメリットを活かせば業務のペーパーレス化も図れます。例えば従来、同社の現場監督は、図面を印刷して現場に持参していました。今後、必要なファイルをすべて Dropbox のフォルダに格納し、タブレットやスマートフォンで確認する形にすれば、印刷物を大きく減らせます。荷物の削減によって社員の負担も減らせると同社は考えました。
「ソリューションは即決でしたが、現場への導入は時間をかけて進めました。というのも、いきなり新しい仕組みに切り替えると、社員の負担が大きいと考えたためです」
と西口氏は言います。
アカウントを全社員に配布した上で、積極的に活用したい人、部分的に使ってみたい人、各々が自分のペースで Dropbox に慣れていけるように総務部がサポートしました。
結果: 書類の作成・修正業務を月 10 時間程度削減
現在は、Dropbox に現場ごとのフォルダを作り、ここに図面や工事打合せ簿などのファイルを保管できるようにしています。あえて厳密なアクセス権限設定を行わず、担当以外の現場のファイルも確認できるようにすることで、“引き出し”の効果を高めています。同社が多く手掛ける公共事業は、自治体や官庁から請け負う仕事のため、提出書類には厳格なルールが求められます。工事打合せ簿の作成にも高いスキルが要求されますが、Dropbox を使い始めてから、工事打合せ簿に関する問い合わせ件数や修正の回数は減少傾向にあるそうです。
「ベテランから若手まで、誰もが正しい状態の書類を確認して、工事打合せ簿を作成できるようになった効果は大きいです。また、担当者がすぐ手を動かせない場合などは、修正作業を社内の別の人に頼むことも容易になりました」と西口氏。
資料や書類の作成・修正に関わる業務は、月に 10 時間ほど削減できています。ペーパーレス化も進んでいます。Dropbox の浸透にともない、図面や工事打合せ簿を紙に印刷して持ち歩くケースが減ったほか、常に最新のファイルをタブレットで確認できるようになり業務効率も上がっています。
「工事打合せ簿は 1 ファイル 20~30 ページあるワードファイルで、1 現場で 200 回以上作成するケースもあります。そのほか図面データや、現場で撮影した画像などもあるため、特に工期の後半は、PC のハードディスク容量がひっ迫して動作が遅くなることがありました。Dropbox の導入後は、そうした事態も解消できています」
と西山氏は付け加えます。PC 入れ替えの頻度も下げられているそうです。
さらに社外とのファイル共有も容易になりました。Dropbox 上に外部共有フォルダを作成し、そこにアクセスしてもらえばよいからです。例えば協力会社とのやりとりは、以前はメールにファイルを添付して送付し、確認を依頼していました。現在はフォルダを使って簡単に、かつ常に最新のデータを確認してもらえるようになっています。また、相手が作ったファイルをもらう際も、フォルダにアップロードしてもらうだけで済みます。今はまだ西山氏をはじめとする一部の社員が行っているのみですが、このような利用が広まれば、さらに得られる効果は増大するでしょう。
「『Dropbox Paper』など、使いこなせていない機能はまだたくさんあります。Dropbox にはぜひ、より効果的な使い方を提案してもらいたいですね」(西口氏)。
ノウハウや知見の詰まった引き出しとしての利用から、より多彩なファイル共有基盤としての活用へ。今後も Dropbox が、同社の業務を支えていくことでしょう。
Dropbox 導入の主な効果
過去ファイルをひな型にして作成することで、工事打合せ簿の作成・修正にかかる時間を削減できている
ファイルをローカルに保管せずに済み、PC のハードディスク容量の確保が容易に。PC の交換頻度も下げられている
Dropbox 上のファイルを外部と共有できる。メール添付のやり取りを減らしたほか、常に最新の版を共有できるようになった
"正しい書類をいつでも確認できるようになったことが、社員のスキル底上げに良い影響をもたらしています。実際、工事打合せ簿の修正依頼は減っています。"