内的コミュニケーション(チーム メンバーが自分自身や自分の仕事をどう捉えているか)は、内なる対話を方向付け、他者との関係に影響を与えます。その逆もまた然りです。対人コミュニケーション(他者にどのように話しかけるか、またどのように話しかけられるか)は、他者とのつながりや共同作業の進め方に大きな影響を及ぼす可能性があります。作業場所が分散していると、ネガティブな考えをコントロールしたり、ポジティブで明確なコミュニケーションを維持したりすることが難しくなる場合がありますが、どちらもチームの幸福度と生産性にとって不可欠な要素です。
この記事では、チームが対人コミュニケーションと内的コミュニケーションのスキルを向上させるための、実践的な戦略とエクササイズをご紹介します。こうした戦略を通じて、チーム メンバーが自信を持ち、支え合い、つながりを感じられる、より幸福度の高い職場環境を醸成できます。
内的コミュニケーションと対人コミュニケーションの比較
内的コミュニケーションとは、思考や行動を形作る内なる対話のことです。これは、私たちが常に自覚しているとは限らない「心の中の声」として機能します。ポジティブな自己イメージを持つことで、この内なる対話がより良いものとなり、創造性、集中力、意思決定力の向上につながります。
しかし、脳は常に合理的であるとは限らず、どれだけ自己成長に努めていても、不安が忍び寄ることがあります。そうしたネガティブな考えを放置すると、士気の低下や意思決定の妨げにつながる恐れがあります。
一方で、対人コミュニケーションとは、人と人との間で行われる外的な対話を指します。これは、情報、アイデア、感情のやり取りや、会話、ボディ ランゲージ、ソーシャル キュー(社会的合図)を通じた他者との関わり方を含みます。私たちが世界をどう認識し、どのように関わっていくかに影響を与え、他者との関係を築く助けにもなります。
両方のコミュニケーションがともに、チームのダイナミクスに影響を与えます。
対人コミュニケーションがうまくいかなくなると、ネガティブな自己対話につながる可能性があります。たとえば、相手の口調を深読みしたり、相手の意図を疑ったり、不明瞭なメッセージの意味を読み取ろうとして時間を浪費したりします。同様に、自分自身に対してネガティブな話し方をしていると、他人からのフィードバックを批判と読み違えやすくなり、誤解が生まれたり人間関係をこじらせたりする可能性があります。
そのため、両方のコミュニケーション スキルをチームで身につけることが重要なのです。対人コミュニケーションと内的コミュニケーションについて、ポジティブな例とネガティブな例をいくつか見てみましょう。
内的コミュニケーションの例
私たちは皆、それぞれの経験や状況の捉え方に基づいて、独自に内的コミュニケーションを行っています。とはいえ、共通する思考パターンが現れることもよくあります。
ポジティブな内的コミュニケーション
- 成功をイメージする:「私は内容をしっかり把握している、大丈夫。」
- 能力を肯定する:「これまでも難しい課題を乗り越えてきたし、今回もできる!」
ネガティブな内的コミュニケーション
- 自己不信:「なぜあんなことをしたのだろう?何を考えてたんだろう?」
- 挑戦から逃げる:「そのタスクは無理。荷が重すぎる。」
こうした思考に気づくことで、それらがプライベートや仕事でのコミュニケーション スタイルにどのような影響を与えるかを理解するのに役立ちます。
対人コミュニケーションの例
バーチャルな環境では、同僚とのコミュニケーションの仕方が重要になります。テキストや句読点によって口調が伝わり、些細なことでも大きな違いを生むことがあります。
効果的な対人コミュニケーションの例
- 建設的なフィードバックを伝える:「プレゼンテーション、素晴らしかったです!次回は主要指標のスライドを加えると、もっとよくなるかもしれませんね。」
- 明確な指示を出す:「素晴らしい考察ですね!さらに詳しい背景として、前四半期の売上傾向を加えることも検討しましょう。」
非建設的な対人コミュニケーションの例
- 通話中に遮る:「ちょっと待って。それはやめて、私のやり方でやってみましょう。」
- 受動攻撃的な反応:「いいですよ、それが一番いいアイデアだとあなたが思うなら…」
バーチャルな環境では、対面でのやり取りが継続的に行われないため、誤解が生じる可能性は従来型の職場よりも高くなります。こうした望ましくないパターンに陥ったときに気づいて対処できるよう、実践的な取り組みやツールを日常の業務に組み込むことがリモート チームには不可欠なのです。

内的コミュニケーションを向上させる方法
リモート ワークは 1 つのスキルであり、他のスキルと同様に、習得するには時間と練習が必要です。このスキルを磨くうえで重要なのは、自分自身の内的コミュニケーションのパターンを認識し、それがチームでの作業中にどのように表れているかを理解することです。
ネガティブな内的コミュニケーションや自己対話により、通常の心の準備が、最悪のシナリオばかり想定する思考に変わってしまい、過度に謝るようなコミュニケーションをとる、発言をためらうといった、望ましくないパターンにつながる可能性があります。対面でやり取りする機会が少ないリモート ワークでは、孤独感からネガティブな思考が増幅されることもあります。
以下では、内なる対話を創造性とサポートの源に変えるために役立つエクササイズやフレームワークをご紹介します。
「役に立たない考えを書き換える」エクササイズを活用する
内的コミュニケーションを習得するための重要なスキルの 1 つは、ネガティブな考えが浮かんだときにそれに気づき、それがどこから来ているのかを突き止めることです。
その感覚をつかむために、Dropbox の「役に立たない考えを書き換える」エクササイズを試してみましょう。このワークシートは、自分の行動や決断に影響を与えている可能性のある思考を特定して評価し、調整できるようにするために設計されました。
次のように使用できます。
1. 「共通する思考スタイル」を見直す:ディスカッションの後や、グループ ミーティングの終わりに、少し時間を取って「思考スタイル ガイド」を見直してみましょう。そして、次の問いに対する答えを書き留めます。「自分がよく陥ってしまう、役に立たない思考スタイルは、____ です」「役に立たない考えを見直すには、____ するのが私にとって最良の方法です。」

2. 「思考記録ワークシート」を活用する:自分の思考スタイルがわかったら、数日後、その日一日に覚えている思考を、「思考記録ワークシート」に書き留めます。特に、その思考がその状況で自分の行動にどう影響したか、その後どうなったかを振り返ってみましょう。

3. 考えの「書き換え」をしてみる:記録を読み返して、「役に立たない」と思う考えを 2 つ選びましょう。その考えが正しいとしたら、その理由は何かをワークシートに書き留めます。たとえば、「自分は生産性を十分に維持できているだろうか?」と考えている従業員の場合、予定していたことをすべて完了できなかった日を挙げて、ネガティブな自己対話が正当であると証明できるかもしれません。

4. 考えの「見直し(リフレーミング)」をすることで自分自身を導く:これまでに集めた情報をもとに、元の「役に立たない考え」を書き換えます。たとえば、「自分は生産性を十分に維持できているだろうか?」という考えは、「私は着実に前進していて、日に日に上手く優先順位づけができるようになってきている」と書き換えることができます。
このエクササイズは役に立ちますが、それだけで終わりではないことを覚えておくことが大切です。本当の変化を実感するには、継続的な取り組みが必要です。週に一度、20 分だけ自己内省をする時間を確保してみてください。そうすることで、古い思考パターンを新しいパターンに書き換える習慣が身についていきます。
「視点を変える」新しい方法を実践する
役に立たない思考パターンの影響を軽減するもう 1 つの方法は、習慣を見直し、ポジティブな内的コミュニケーションを促すものへと変えることです。このエクササイズによって、ネガティブな自己対話を書き換え、自分の能力、価値、成功の可能性を支える肯定的なメッセージにすることができるようになります。
次の 3 つのステップに分けて取り組みます。
1. 古い知識を捨てる:まず「心の大掃除」をするつもりで、現在の考えや習慣、価値観が自分の内的コミュニケーションにどう影響しているかを振り返ります。「古い知識を捨てる方法の基本」ガイドをご活用ください。

2. 視点を変える:次に、友人に話すように、自分自身に話しかけてみましょう。前のエクササイズで把握した習慣や考えを例として、もし自分に話すときと同じように友人に話しかけたら自分はどう感じるかを考えてみてください。

マインドフルネスを取り入れたチーム ビルディング アクティビティに参加する
内的コミュニケーションにおいて、よりチームを意識した考え方にシフトし、チームの士気を高めるために有効な方法が、シンプルな感謝のエクササイズです。たとえば、グループで「感謝ボード」を設定します。チームで前向きなフィードバックを互いにやり取りする場をつくることで、ポジティブな考え方を内面に取り入れやすくなり、自分自身の内的コミュニケーションにも反映できます。こうした「感謝の瞬間」を共有することは、内面に蓄積されている可能性のあるネガティブな感情を打ち消し、チーム内での前向きな会話を促す効果があります。
この仕組みは次のとおりです。
1. チームとして「コメントを投稿」する:私たちは Miro を使って「感謝ボード」を設定し、1 週間を通じてチームの誰かに感謝したいと感じたときは、いつでもコメントを残すよう伝えています。たとえば、誰かがプロジェクトを手伝ってくれた場合、その人への感謝のメッセージと簡単なエピソードを書き込むことができます。

2. コメントを読み上げ、共有する:ミーティングの冒頭や、適切だと判断したタイミングで、感謝ボードに寄せられたコメントを読み上げます。これにより、感謝の気持ちや前向きな評価が常にチームに循環します。特に非同期で作業している場合、チーム メンバーはボードをいつでも見返し、チームで起きている良い出来事を思い出すことができます。
また、個人としてもチームとしても、自分の内的コミュニケーションに関してどんな課題に直面しているかを率直に打ち明けられる場をつくることは、特に分散化した仕事環境において、互いがより深いレベルでつながるきっかけになります。こうしたオープンな対話を通じて、日々の習慣やツールをどのように活用して内的コミュニケーションを改善しているかを共有することもできます。
Dropbox の Remotely Curious ポッドキャストのエピソード「Not Okay(大丈夫じゃないときに)」でも話していますが、私たちは皆、社会的な生き物であり、互いから学び合いながら生きているのです。
チームの対人コミュニケーションを強化させる方法
チームの対人コミュニケーションを向上させる第一歩は、チーム メンバー間に信頼の文化を築くことです。信頼関係はコミュニケーションの雰囲気を決定づけるもので、メッセージの受け止め方にも影響を与えます。信頼があれば、メンバーは自信を持って発言したり、質問したり、自由にアイデアを共有したりできます。ただし、分散したチームの場合、同僚を理解し信頼の文化を築くには意図的な取り組みが必要です。
Dropbox のバーチャル ファーストがうまく機能しているのは、信頼関係の構築や人間関係の改善には人と人とのつながりが必要であると、このモデルの設計時に認識していたからです。そのため、私たちは定期的に対面で集まり、チーム ビルディング、戦略の最終決定、緊急納品への対応など、明確な目的を持った集まりを計画しています。
チームの対人コミュニケーション スキルを向上させる方法を、いくつかご紹介します。
チームにわかりやすく書く方法を学習してもらう
職場における優れた対人コミュニケーションとは、いかに協力して効率よく仕事を進められるかという点にかかっています。バーチャル環境では、Zoom を除けば、メールやドキュメント共有、Slack メッセージに大きく依存します。そのため、延々と続くスレッドや文章に、伝えたいメッセージや意図が埋もれてしまうことがよくあります。
文章での明確なコミュニケーションの必要性に対応する方法の 1 つが、「理解されるように書く」ツールキットに基づいたライティング ワークショップを開催することです。チーム ミーティングでこのワークショップを活用することで、言葉を簡潔にし、要点を押さえ、誤解のない文章構成にする方法をチームに教えることができます。
ワークショップの進め方
1. 良い文章を書くための 5 つの基本ルールを説明する:主要な原則に焦点を当てながら、簡潔な良い文章を書くための基本的なルールをチームに教えます。たとえば、主旨を冒頭に置き、不要な細かい情報に埋もれないようにする、といったことです。Dropbox Paper にある「Writing 101(ライティングの基本)」ワークシートを使えば、このルールに従っている例文とそうでない例文を提示でき、効果的な対人コミュニケーションがどのようなものかを正しく理解してもらえます。

2. 文章の自己評価を促す:チーム メンバーに、自分の送信済みボックスから最初の 3 件のメールを選び、文章を評価してもらいます。「ライティング評価表」を使って、明確さ、トーン、構成を評価してもらいます。このプロセスが安全で安心なものとなるように、各自の評価は非公開のままにし、最終スコアを書き留めて、改善が必要なポイントを特定するよう促します。
3. 明瞭な文章に書き換える方法を実践する:ワークショップの進行材料として、自分の送信済みフォルダからメールを 1 件選ぶか、サンプル テキストを作成して用意します。そのオリジナル文をチームと共有し、「ライティング評価表」での評価を説明し、改善が必要なポイントを示します。次に、「要点を最初に書く」「簡潔にする」「能動態を使う」「複雑な情報を分割する」「明瞭にする」の 5 つの原則に重点を置きながら、実際に書き換えてもらいます。最後に、書き換え前と書き換え後の文章を示し、小さな修正でもコミュニケーションをいかに改善できるかを説明します。
これらのスキルを教え、実践することで、チームの対人コミュニケーションが強化されます。明瞭な文章を書くことに投資すると、より効果的な共同作業を実現し、より連携がとれた信頼できる職場環境を築くための道が開かれます。
エチケットに関する期待値を明確にする
バーチャル ワーク環境において、エチケットの期待値を明確にすることは、効果的な対人コミュニケーションのために不可欠です。Dropbox の Remotely Curious ポッドキャストのエピソード「Etiquette(エチケット)」でもお話しているように、Dropbox がバーチャル ファースト モデルへ移行する際には、いつ、どのように共同作業するのかを定義する必要がありました。こうしたガイドラインがなければ、誤解が生じたり、チームの関係性に不和が生じたりする可能性があります。
対面時の暗黙のルールが失われがちなリモートワークでは、明確なルールを設定することで、互いを尊重しつつ生産性を保ちやすくなります。これらの「見えないルール」を明らかにすることで、理解が深まり、やり取りがスムーズになります。
これを実践するためのポイントを以下に示します。
- ミーティングの期待値を明確にする:対人コミュニケーションは視覚的なサインによって促進されるため、ビデオ通話の活用に関するガイドラインを設定しましょう。カメラをオンにすべきケースと、オフにしても構わないケースをチームに伝えます。また、バーチャル背景の利用を推奨することで、全員が快適に参加でき、気を散らさない安定したミーティング環境を作り出すこともできます。
- アジェンダを設定する:明確なアジェンダがないと、バーチャル会議は混乱を招きやすくなります。会議前に「Meeting Prep(ミーティング準備)ワークシート」を使ってアジェンダを配布し、話し合いの段取りを整えましょう。また、会議を軌道に乗せるために、冒頭で簡単な進捗共有を行ったり、質疑応答の時間を設けたりすることも有効です。こうすることで、各参加者が準備を整え、発言すべきタイミングと話を聞くべきタイミングを把握できるようになります。

- 発言の制止を避ける:効果的な会議を行うために、全員の意見を聞きたいと明確に伝えます。もし途中で会話が中断した場合は、プロフェッショナルかつ丁寧な態度で、議論を軌道に戻すよう導きます。これにより、全員の意見を聞くことができ、チームの関係が強化されます。
会議中のコミュニケーション方法に関する期待値を設定することで、チームは明確さと敬意を持ってバーチャルなコミュニケーションができるようになり、最終的には対人関係の向上につながります。全員がやり取りのルールを理解すれば、参加者間が公平になり、誰もが価値を認められ貢献できると感じられるようになります。
チームのコミュニケーションの変革を支援
対人コミュニケーションと内的コミュニケーションのどちらも、チーム メンバーが自分たちの仕事をどう感じるか、そして互いの人間関係に影響を及ぼします。
メンバーが安心して発言できず、コミュニケーション スタイルが不明確な場合は、ネガティブな自己対話のスパイラルに陥る恐れがあります。また、チーム メンバーが自分の考えを整理したりサポートを求めたりする機会がないままこのサイクルに陥ると、その影響がやり取りにも及び、チームのダイナミクスに影響を及ぼす可能性があります。
どちらのタイプのコミュニケーションも教えられるスキルで、練習が必要です。ネガティブな自己対話を特定できても、すぐに解決はできません。また、明確なガイドラインを設けずに良好なコミュニケーションを期待しても、おそらくうまくいかないでしょう。
アドバイスを示すとすれば、社内外を問わず、率直で有効なコミュニケーションの場をつくるために、チームに適切なツールとガイドラインを用意することです。
リモート チームのダイナミクスにポジティブな影響を与えるために、さらに多くのエクササイズやフレームワークをお探しでしたら、Dropbox のバーチャル ファースト ツールキットをお試しください。